東大医学博士による胃腸科肛門科の最新医療ブログの「医師のための内視鏡専門講座」のご協力により提供しています。
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大腸内視鏡挿入について、よく言われることですが、「上手な医師ほどRs~S/C topを大切にする」というのがあります。
大腸内視鏡を肛門に挿入してからRs手前までは画面の左方向に展開する(ルーメンが位置している)のは、決まりきったパターンです。
Easy caseは、そこですぐに(大概は一襞超えたところで)右方向に展開する(言い換えると、右ひねりで術者が意図的にRsを巻き込める)パターンです。
Not easy caseは左方向に展開する長さが長いケースも、よくあります。
この「Rsで右方向に展開させる」で失敗すると、以後の挿入の組み立てができません。
この「Rsで右方向に展開させる」が型通りに成功した場合は、ほとんど「勝ちパターン」と言えるでしょう。
この場面で腸管(S/C)を伸ばしながら(=ループ形成をしながら)進めてから、早期に(大概は先端がSDJ越えしてから)直線化を図る方法もあり、時間的にはそのほうが短時間で挿入可能ですが、ややレベルが落ちる挿入法です。(かつて、逆「の」の字型挿入法というものがありましたが、まさにこれのことです)
「Rsで右方向に展開させる」について
doctor曰く、
①Rsが左方向に見える(ここまでは全例)
②さらに左展開が長い場合は、遠慮気味に追いかける
「左展開一襞超え」の後に、さらに左展開が長い場合には、その時点で無理に右方向に展開させるのは無理です。
左展開するルーメンを「遠慮気味に」少しの長さだけは「誘われるがままに」追うことになります(追いかけてもAV23cm程度以上にはほとんどなりません。それ以上長く左展開で追いかけるのは大抵ダメ)。
③遠慮気味に左展開する腸管を追いかけている最中に、右展開する場所を探す
「左方向に追いかけていたプッシュ気味のファイバーを引き戻すと、内視鏡画面では腸管がくるんと回る(大概画面は反時計回りに回転します)はずですが、右方向にルーメンが位置して、なおかつ右ひねりで(あるいは上下左右アングルも使用して)右方向に先端が容易に(自然に)進む(なおかつ、手に感じるファイバーの抵抗感がふと軽くなる)場所を探す」
挿入困難例ではこの操作が難しく、時間がかかってしまうのが普通です。その場合、素人が傍目から見ると、AV20cm程度でしばらく戸惑っているようにさえ見えます。
(正しくは「かなり多くの襞をクリアしたのに、まだAV20cmだ!」)
大腸内視鏡挿入のトップエンドの医師はほぼ全員と言っていいほど、この「Rsで右方向に展開させる」のに時間をかけます。
ここで短気を起こしてプッシュで挿入すると、以後の挿入が美しく組み立てられないことを上級者は理解しているのです。
我思う、
もう、言うことありません。同意!です。
私がこのことに気が付いたきっかけは、ある施設で、ベテランの先生ほど難しい症例(前回のカルテでわかる)では、fiberがAV20cmあたりでとまっていて、右手と左手でフラループ遊び/マイクスタンドパーフォーマンスをやっていることに気が付いたときでした。
「普通の数学」から「大学への数学」へのステップアップには必須の項目です。