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体の健康診断=定期健康診断
についてのお話、第2弾目
今年の横浜地裁判決のご紹介です。

【概要】
2008年2月18日
 非正規雇用女性はA病院で健診受診し
 胸部Xpで「右下肺腫瘤影」があり、
 「胸部CT等精査必要」の健診結果でした。

2月22日 
 病院が会社に、健診結果を送付

★3月末 
 会社は女性に健診結果を渡したと主張

★5月31日
 遺族側は女性が健診結果を受け取ったと主張

6月2日 
 女性がB病院で精密検査
 翌々日肺癌告知
 その後C病院で治療

2010年5月
 肺癌のため死亡


つまり、健康診断の結果、
その健診機関の診断は、胸部CT等精査必要だった

会社は同じ月に結果を受け取ったのに、
この【非正規雇用】の女性への通知が
約1ヶ月後の3月末か
約3ヶ月後の5月末だった。

早く通知してくれたらよかったのに、、、
という訴訟です。

裁判では、3つのポイント(学び)がありました。


非正規雇用でも、会社が実施した健康診断なので、
会社には、正規社員と同様に安全配慮義務があった。

つまり、結果の通知などのフォロー体制は
受けさせた以上、しっかりやらねばならない
という学びです。


健診結果の通知は遅れたのか?
他の社員の聞き込み等で
遅れたと判断されました。

つまり、
会社が3月に通知していたのならば
その証拠も残さなければいけない
という学びです。


通知遅れと死亡の因果関係は
認めることはできないとしつつも
女性が被った精神的苦痛の慰謝料などとして
330万円の支払いを命じた

つまり、
因果関係なくても
精神的苦痛には誠意を持って
対処しなければならないという学びです。

(詳細は末尾にあります)

【産業医からみた対策】
《健診機関からの結果の扱いについて》

・産業医のいない規模の会社は、
会社にだけ届くのであれば、滞りなく社員へ渡す。
会社には送ってもらわないようにする。

・産業医のいる会社は、
会社と個人に届くようにしてもらう。

本当は、結果の届いた翌月の産業医訪問時に
産業医判定をしてもらい、
速やかに従業員にその結果も届けるべきですね。

いかがでしょうか?
以上、お読みいただきましてありがとうございます。
コメント、ご質問等、お待ちしております。 全てしっかり、読ませていただいております。ご質問には、真剣にお答えさせていただきます。

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◆原告:遺族の主張

(1)安全配慮義務の有無
 施設側は女性の使用者として、生命および身体の危機から保護するよう配慮する安全配慮義務を負っていた。したがって、女性に健診結果が判明したらすぐに知らせる義務があった。
(2)結果の通知時期
 施設側は2008年2月22日に健診結果を受け取っており、直ちに女性に渡さなければならかった。しかし、漫然と放置し続け、渡したのは女性の最終勤務日である2008年5月31日だった。
(3)通知の遅れと死亡の因果関係
施設側が女性に直ちに通知していれば、1期の段階で外科手術を受けることができ、現在まで生存している可能性は極めて高かった。少なくとも2010年5月11日に死亡することはなかった。

◆被告:法人側の主張

(1)安全配慮義務の有無
 施設が女性に対し、使用者として安全配慮義務を負っていたことは争わない。しかし、安全配慮義務は業務遂行のための物的環境および人的組織の管理を適切に行う義務である。通知が遅れたとしても、施設責任者の過失であり、法人側は義務違反とは言えない。
 また、女性は非正規職員であり、法人側は健康診断を受診させる労働安全衛生法による法的義務を負っておらず、善意で受診させたにすぎない。したがって、健康結果を直ちに知らせる義務を負わないと言うべきである。
(2)結果の通知時期
 仮に義務を負っていたとしても、2008年末に女性を含めた全従業員に健診結果を通知している。女性は通知を受領していたのにもかかわらず紛失し、改めて5月31日にコピーとしてあった法人側控えを受領したものと考えられる。
(3)通知の遅れと死亡の因果関係
 肺癌は癌の中でも生存率が低く、1期の患者の5年実測生存率は71.7%。手術による治癒の確率は50%である。女性が手術をしたとしても、現在までの間に死亡していた可能性は十分ある。したがって、仮に損害が認められるとしても期待権の損害にすぎない。善意で健診を受診させずにすぎず、損害額は少額の慰謝料にとどめるべきである。

◆裁判所の判断

(1)安全配慮義務の有無
 法人側は労働契約に基づき、女性に対し健康診断を行ったのであるから、結果は適切な時期に知らせる義務を負っていたというべきである。法人側は遅くとも健診の1カ月後である3月18日までに女性に健診結果を通知する義務があったというべきで、同時点が過ぎたことから債務不履行責任を生じたというべきである。
 女性への健康診断が法的義務に基づくものでないとしても、健診を受診させた以上、別異に解釈するべき理由はないので同様に解するべきである。契約上の義務を超えて、違法といえるかを判断するに足りる事実はないので、不法行為を理由とする損害賠償責任が生じるとは認められない。
(2)結果の通知時期
 女性の行動や記録、「健診結果が遅滞なく知らされなかった」と記憶している者もいることなどから、女性が2008年5月31日に結果を初めて知ったことが認められる。5月31日以前に結果を受け取ったことはないものと推認するのが相当である。
(3)通知の遅れと死亡の因果関係
 法人側が3月18日以前に通知していれば、女性は20日ごろには病院を受診していたと推認できる。 仮に女性が20日前後に病院を受診していたとしても、その時点で女性の肺癌が1期にとどまり手術が可能で、手術により女性が治癒して死亡しなかったとは認めるには足りない。通知の遅れと、女性の死亡との間には因果関係を認めることはできない。
 ただ、3月20日前後で手術が可能であり、抗癌剤および放射線の併用治療の効果が上がることにより、2010年5月の死亡時点で女性が生存していた可能性は相当程度あったと認めることができる。
 よって、法人側が女性に対して、健診結果の通知を遅らせたことで、肺癌治療の開始時期を遅らせ、2010年5月11日時点でなお生存していた相当程度の可能性を失わせ精神的苦痛を与えたものというべきであり、慰謝料として300万円、弁護士費用として30万円を認めるのが相当である。

◆今後の対応
 遺族側の弁護士は「判決を精査して今後の対応を考える」、法人側は「他の職員と同時期に結果を通知したという主張がなぜ認められなかった検証する。今回の理由で賠償が認められたら、従業員の病気は会社の健診不足ということでみんな訴えるようになるのでは」としており、2月20日時点では双方とも控訴するかどうかは未定となっている。
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